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老年医学とは、​高齢者の健康維持を主目的とし、疾患や障害の適切な治療・予防を研究する専門領域です。

高齢者の区分

一般的には、高齢者は65歳以上とされることが多く、65-74歳の方を前期高齢者、75-89歳の方を後期高齢者、90歳以上の方を超高齢者に区分されております。しかしながら、私たちの日常臨床の経験では、特に75歳以上の後期高齢者が、若年成人と異なった特徴を示すことが多いと考えております。
そのような理由で、老年医学の対象をあえて年齢で区切ると、75歳以上の方々が、主な対象です。しかし、老化は、突然始まるわけでもなく、個人差もあります。また、予防医学(老化に伴う様々な疾患の予防)も老年病科の重要なテーマですから、65歳未満の患者様が多く当科に通院しておられます。

老年医学とは

高齢者を診る専門医療の必要性

高齢者を診る医療は、若年成人を対象とする医療とは異なった特徴を持っています。 例えば薬についても、その薬物動態の加齢変化、多剤服用による相互作用、合併症への影響、さらには、”本当にくすりが正しくのめるのか”という服薬の状況にまで配慮する必要があります。 また、高齢者の多くの方が、複数の臓器に障害をもっています。このような多臓器の障害に対して、個別に臓器を検査し、薬を積み重ねるという診療方針は、かえって様々な害をもたらすことさえあります。
また、高齢になると、筋力が衰えて、足腰に自信がなくなってこられる現象がしばしば認められますが、この現象を単なる加齢に伴う老化現象として考えるのではなく、「フレイル」という言葉で、最近では表現され始めております。「フレイル」は、英語で老衰や虚弱を意味する「Frailty (フレイルティー)」をもとに考案されました。特に、後期高齢者では、認知症、転倒・骨折が増加してきます。「フレイル」には単に身体的な虚弱だけでなく、認知症やうつといった精神心理的な「フレイル」、独居など社会的な「フレイル」の3つの要素ももち合わせていることから、老年病科では、「フレイル」に対する包括的な予防や対策の観点からも、患者様を総合的に拝見させていただいております。
老年医学を専門とする老年病科では、スタッフひとりひとりの広範な総合診療科的な経験とサブグループごとの専門的知識を結集して、最終的に患者様の全体像をみて診療にあたっています。そして、患者様の「病気を治す」だけではなく、全人的に「病人をよくする」ことを目標にしています。 とりわけ、老年病科では、高齢者の総合診療に全力を注いでおります。

老年医学の対象

高齢者医療の特殊性に対応するために、われわれは高齢者のための総合診療科として「全人的包括的診療」をおこなうことを指向しています。したがって、“いろいろな病気をもっているので、どこの診療科へ行けばよいか分からない”、“はっきりとした病名が分からない”など、現在の臓器別、疾患別の診療で悩まれる患者様は、まさに老年病科の対象といえます。 また、救急診療を受ける高齢者は、原疾患にかかわらず、容易に多臓器の障害に至るため、臓器別の診療科の枠を越えてしまう例が多くあります。そのため、老年病科は、高齢者の救急診療にも積極的に対応しています。
そのような特徴から、老年医学の対象疾患は非常に多岐にわたりますが、なかでも老年病科の診療することが多い対象疾患としては、認知症、高齢者の動脈硬化性疾患全般、高齢者の呼吸器疾患(嚥下性肺炎、COPD、間質性肺炎、肺癌 など)、骨粗鬆症、圧迫骨折、睡眠時無呼吸症候群などのほか、最近では、食欲不振や体重減少の精査などの診療にも力を注いでおります。東京大学医学部附属病院ホームページ診療科のご案内もご参照ください。