超高齢化社会を迎えた本邦において、サルコペニアは健康寿命延伸の観点から重要な課題です。低栄養と身体的不活動(廃用)はサルコペニアの主要な要因と考えられていますが、主要栄養素である蛋白質や脂質の不足、ならびに廃用との併存が、骨格筋に及ぼす影響については、基礎研究での検証は限られています。
本研究では、等カロリー条件(pair-feeding)下で普通食、低脂肪食(LF)、低蛋白食(LP)、低蛋白低脂肪食(LPLF)を投与したマウスモデルを作成し、さらに後肢固定による廃用モデルを組み合わせることで、栄養不足と廃用が骨格筋に及ぼす影響を検討しました。筋量・筋力に加え、ユビキチン・プロテアソーム系(UPS)関連遺伝子および炎症関連遺伝子の遺伝子発現を評価し、その機序を解析しました。
その結果、LF、LP、LPLFの各群では、筋量・筋力の低下が認められ、LPLF群ではUPS関連遺伝子の発現上昇がみられ、筋分解系の活性化が示唆されました。さらに廃用を併用することで、LP群およびLPLF群では筋量・筋力低下が一層増悪し、UPS関連遺伝子に加えて炎症関連遺伝子の発現上昇が認められました。
本研究の意義は、蛋白質や脂質の不足自体が筋量・筋力の低下に関与することを、等カロリー条件下で、マウスモデルとして示したことにあります。また、低栄養と廃用が相乗的に筋量・筋力の低下を増悪させることを反映したマウスモデルを提示しました。これらのマウスモデルは、サルコペニアやフレイルの病態解明に加え、今後の栄養学的介入や治療戦略の検討に資することが期待されます。
Koichi Toyoshima, Bo-Kyung Son, Miya Oura, Zehan Song, Michiko Nanao-Hamai, Sumito Ogawa, Masahiro Akishita. Combined effects of protein/fat deficiency and disuse on skeletal muscle mass and function in mice. Geriatrics & Gerontology International. 2026