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外来診療

当科の外来では、高齢者医療の専門家として全人的医療を行っております。
<少し物忘れが気になってきた>、<体の不調がどこからきているのかわからない>、<年のせい、といわれたけれど心配>、<全体的に体を評価してもらいたい>など、臓器別の外来診療で解決が難しかった患者様を中心に診療しています。
より具体的な症状としては、物忘れ、食欲低下、体重減少、意欲低下、息切れ、不明熱などの高齢者に多い症候や原因不明の症候、ADLを大きく損ねるきっかけとなる症候に対して幅広く対応しております。
特に、当科では、認知症の患者様を多く診療しており、その分野の専門医がそろっています。また骨粗鬆症を専門とする医師やCOPD、喘息、睡眠時無呼吸症候群などの呼吸器疾患を専門とする医師も揃っています。さらに、当科では多職種によるきめ細かい評価を取り入れており、臨床心理士等による認知機能評価や心理検査、高齢者総合機能評価(Comprehensive Geriatric Assessment: CGA)についても積極的に行っています。
なお、平成25年度外来実績では、新来数(初診数)352名、外来患者総数18,528名、1日平均75.9名でした。特に「物忘れ外来」初診の患者が多く、外来で日常生活の状況の把握や簡便なスクリーニング評価を行った後、多くの場合、心理検査での認知機能の評価、血液検査や画像検査での他疾患の除外や認知症の病型の診断をすすめています。ケースによっては、入院してこれらを評価することもあります。薬物療法を検討するとともに、生活を支えるための社会資源の紹介や介護の助言など、まさに全人的なアプローチで認知症の診療をすすめつつ、積極的に病診連携をはかっています。

2014年9月から2015年3月までの
老年病科初診枠受診患者の主症状の分布(合計:286名)

※小数点以下は四捨五入

入院診療

 当科は、東京大学医学部附属病院入院棟A11階南フロアを主入院フロアとして診療にあたっており、2013年度の入院患者総数は390名でした。研修医と指導医(卒後3年目以降の専門研修医、特任臨床医または大学院生)、主治医(老年病専門医)が3人1組のチームを構成し、各チーム約10名前後の患者様を診療しています。さらに各診療チームの上位に1名のチーム管理医(病棟医長)がおり、診療チームへの指導や入退院の管理などを行っています。全体の疾患の傾向は、認知症と、肺炎や急性心不全のような救急疾患が多く見られました。
 受け持ちチーム内で毎日、診断や治療方針のディスカッションを行っています。加えて、研修医や医学部学生に配慮したミニカンファレンスや水曜日午前の全体カンファレンス、さらに各疾患を専門とする医師による、骨粗鬆症、認知症、呼吸器・循環疾患に関するカンファレンスを行っています。地域連携部や看護師さんとともに退院支援をディスカッションする退院支援カンファレンス、栄養士や担当看護師と低栄養状態の患者様の対策をディスカッションするNSTカンファレンスも施行されています。
 また当科の特徴として、認知症の疑いの患者様に対する『認知症精査入院』を継続しています。認知機能や抑うつ、運動障害の評価と頭部CT、MRI、脳血流SPECT、MIBGシンチグラムによる画像診断、一部の症例では髄液検査やタップテストにより、疾病診断と治療の導入に関わり、さらに、高齢者総合機能評価による包括的評価を積極的に導入し、退院後の介護状況の把握やサポートをこころがけました。睡眠時無呼吸症候群に対する一泊二日の精査入院も行っています。
 さらに、高齢者の食欲不振に対する『食欲不振・体重減少精査入院』も始めました。高齢者の食欲不振、体重減少の原因は消化器疾患などの器質的疾患以外にも認知症やうつ病などの精神的疾患や環境要因など、その原因は多岐にわたっています。そのため、外来通院のみでは食欲不振の原因探索や介入に困難な症例が多く見られます。そこで東大病院老年病科では高齢者の食欲不振・体重減少精査入院を推進し、その原因を明らかにし、高齢者の食欲不振の改善を行い、かかりつけ医の先生方の外来診療にお役に立てたらと考えています。食欲不振の改善にむけた精査・加療に加え、フレイルやサルコペニアに対して適切な治療を行うよう検討しています。特定の疾患の診断治療のみに関わるのではなく、入院時に施行する高齢者総合機能評価などをもとに、患者様の全身の問題点の把握と介護状況にまで配慮した診療をこころがけています。

当科の入院患者の罹患疾患(平成26年度、345名)

当科の入院患者の罹患疾患

当科では高齢者の食欲不振・体重減少精査入院を行っています

高齢者の食欲不振、体重減少の原因は消化器疾患などの器質的疾患以外にも認知症やうつ病などの精神的疾患や環境要因など、その原因は多岐にわたっています。そのため、外来通院のみでは食欲不振の原因探索や介入に困難な症例が多く見られます。そこで東大病院老年病科では高齢者の食欲不振・体重減少精査入院を推進し、その原因を明らかにし、高齢者の食欲不振の改善を行い、かかりつけ医の先生方の外来診療にお役に立てたらと考えています。

病棟医長:小島太郎

食欲不振、体重減少パス入院のフローチャート